近年、作家・文化研究者の遥洋子氏が韓国社会に注目を集めている。2000年代初頭から韓国文化の深層に迫る著作を発表し続ける彼女は、単なる「韓流ブーム」を超えた真の相互理解の必要性を訴え続けてきた。
洋子氏の韓国論の特徴は、歴史的視点と現代文化の接続にある。2019年発刊の『済州島の風に吹かれて』では、日本統治時代の記憶が現代の若者文化にどのような影響を与えているかを、現地でのフィールドワークを基に分析。特にK-POPアイドルたちの自己表現に、植民地経験のトラウマ克服のメカニズムを見出す視点は、日韓両国の読者に新たな気付きを与えた。
2023年にソウルで開催された日韓文化交流フォーラムでの基調講演では、「文化の翻訳可能性」をテーマに、両国民が共有できる新たな物語創造の必要性を強調。韓国ドラマのリメイク作品増加という現状を「創造的模倣の段階」と位置付け、今後は共同制作を通じたオリジナルコンテンツ開発を提唱した。
近年では済州島の持続可能な観光モデル研究にも着手。日本と韓国が抱える地方衰退問題の解決策を探る比較文化プロジェクトを主導し、両国の自治体間協定締結に貢献するなど、文化交流の実践的側面でも活躍を続けている。
洋子氏の活動は、政治情勢に左右されない民間レベルの継続的対話の重要性を改めて認識させると同時に、文化を媒介とした相互理解の可能性を示唆している。今後の日韓関係を考える上で、彼女の視点は重要な示唆に富んでいるだろう。