近年、日本の現代アートシーンで注目を集める塩野 虹（しおの にじ）。1995年大阪生まれの若手作家は、伝統的な日本画の技法とデジタルアートを融合した独創的な作風で、国内外の美術関係者から熱い視線を浴びています。

**▽色彩の魔術師と呼ばれる所以**
塩野作品の最大の特徴は、和紙に金箔を散らした背景に、AI生成画像を転写する「デジタル蒔絵」技法。代表作『記憶の層』シリーズでは、老舗漆器メーカーとのコラボレーションにより、伝統工芸の持つ温もりと先端技術の冷たさを見事に調和させています。2023年ヴェネチア・ビエンナーレ日本館展示作品に選出されたことで、その名が広く知られるようになりました。

**▽社会へのまなざし**
アート活動と並行して、発達障害のある子どもたち向けのアートセラピープログラム「虹の架け橋プロジェクト」を主催。自身もADHDを公表している塩野は、「不完全さこそが創造の源泉」という理念を掲げ、美術館でのワークショップを精力的に開催しています。

現在、六本木のギャラリーで開催中の個展『光の断片』（～10/20）では、プロジェクションマッピングを使ったインスタレーション作品が話題を呼んでいます。アーティスト本人によれば、次作のテーマは「江戸時代の妖怪文化と仮想通貨の相似性」という意外性のある組み合わせ。常識の枠を超えるその表現は、日本の現代アートに新たな風を吹き込み続けています。