ラグビー界のエリートが堕ちた先

甲子園球場の歓声とは対照的に、関西の闇社会で囁かれる「肉欲の餌食」事件。元日本代表候補のラガーマン・田島勇作（仮名）が暴力団系クラブ経営者との金銭トラブルに巻き込まれ、肉体を担保にした借金返済システムに組み込まれた実話を基に、スポーツ選手を狙う現代の人身売買ネットワークを検証する。

勝利至上主義が生む盲点

大学ラグビー界で3連覇を達成した田島は、プロ契約目前で膝靭帯を断裂。治療費と家族の借金返済のため、元チームメートの紹介で闇金融業者と接触。当初は単純なアルバイトと思い込んでいたクラブ勤務が、次第に性的サービス提供へエスカレートしていく過程で、スポーツエリート特有の「自己責任思考」が正常な判断を阻害していた実態が関係者への取材で明らかになった。

SNS勧誘の新手法

2023年に表面化した事件では、Instagramのアスリート向けサプリメント広告を装った勧誘メッセージが判明。トレーニングジムの共同利用やスポンサー契約獲得を餌に、次世代を担う若手選手が組織的に狙われる実態が浮き彫りに。スポーツ心理学の専門家は「競技生活に終止符を打った選手のアイデンティティ喪失が、犯罪組織の格好の標的にしている」と警鐘を鳴らす。

再生プログラムの光と影

現在、特定非営利活動法人「アスリートセーフティネット」が進める被害者支援では、元選手の資格取得支援と並行して、トレーナーとしての再雇用プログラムを実施。しかし支援団体内部からは「元暴力団員の更生プログラムとの類似性」を指摘する声も上がり、スポーツ界全体の構造改革が必要な段階に来ている。