小山明子(1936-2018)は日本映画史に残る重要な女優の一人であり、特に夫である大島渚監督との共同作品で知られる。1965年の『悦楽』では社会規範に挑戦するヌードシーンが話題を呼び、当時の表現規制を巡る議論に大きな影響を与えた。
芸術的表現とエロティシズムの境界を追求したこの作品は、1960年代の日本新浪潮運動を象徴する事例として研究対象となっている。小山の演技は単なる官能性を超え、戦後日本の社会構造に対する批評性を内包していた点が特徴的だ。
映画批評家の佐藤忠男は「身体表現を通じた社会告発」と評し、フェミニスト映画理論でも「女性の主体性と客体性の二重性」という観点から分析が続けられている。現在では国立映画アーカイブでデジタル修復版が保存され、映画史教育の教材として活用されている。
ヌードシーンの芸術的価値に関する議論は今日でも継続中だが、小山明子の仕事は日本映画の表現可能性を拡張したという点で、映画研究者の間で広く評価されている。