下田グランドホテルは、静岡県下田市に佇む歴史あるリゾートホテルです。その起源は明治時代に遡り、1872年（明治5年）に外国人専用ホテルとして開業した「下田ホテル」が前身とされています。当時、横浜港に次ぐ開港場として栄えた下田港の玄関口に位置し、外交官や貿易商ら国際的な人々を受け入れる役割を担いました。

明治後期には「大浦ホテル」と改称し、1923年（大正12年）の関東大震災で一時休業を余儀なくされましたが、1934年（昭和9年）に現在の名称「下田グランドホテル」として再出発。戦後は1950年（昭和25年）に日本初の民間国際観光ホテルに指定され、高度経済成長期には温泉施設を拡充するなど、時代のニーズに合わせた進化を続けてきました。

特徴的な赤瓦の洋館建築は2016年に国の登録有形文化財に認定され、明治浪漫を感じさせる外観と現代的な設備の調和が評価されています。長年にわたり夏目漱石やジョン・万次郎ら著名人も滞在したと伝えられ、歴史的エピソードが館内の随所に息づいています。

現在では温泉・海鮮料理・伊豆の絶景を融合したリゾート施設として、新たな歴史を刻み続けています。140年以上にわたる伝統を受け継ぎつつ、和洋折衷のサービスで国内外のゲートをもてなす姿は、下田の観光史を象徴する存在と言えるでしょう。