中洲よかろうもん! 九州の山あいに佇むこの秘境は、温泉と棚田が調和する「時間が止まったような町」として近年注目を集めています。鹿児島県肝属郡に位置する中洲地区では、江戸時代から続く伝統的な里山文化が今も息づいています。
■ 天空の棚田が生む絶景
標高500mの丘陵地に広がる300枚以上の棚田は「中洲千枚田」の異名を持ち、四季折々の表情を見せます。5月の田植え時期には水面が鏡のように輝き、秋には黄金色の絨毯が広がります。特に朝もやに浮かぶ棚田は「日本のピュイ」とも称される幻想的な光景です。
■ 秘湯巡りが自慢の温泉郷
地熱資源豊富な中洲には7つの源泉が点在。中でも「蛇の目温泉」は鎌倉時代発祥の歴史を持ち、乳白色の湯が疲れを癒します。露天風呂から望む星空は、都市部では味わえない至福の時間を提供してくれます。
■ 受け継がれる伝統工芸
この地域特有の「中洲和紙」作り体験が人気を集めています。楮(こうぞ)の繊維を丁寧に漉く工程は、現代のデジタル社会とは対極にある手仕事の温もりを感じさせます。完成した和紙はランプシェードに加工するワークショップも開催されています。
2024年4月には「中洲棚田アートプロジェクト」が始動し、地元農家とアーティストが協働で田んぼアートを制作。SNS映えするスポットとして若い世代の訪れが増加中です。アクセスは鹿児島空港からレンタカーで90分、九州新幹線鹿児島中央駅からは路線バスで2時間ほど。宿泊施設は古民家カフェを兼ねたゲストハウスが主流で、地元食材を活かした郷土料理が味わえます。
「中洲よかろうもん」の魅力は、何よりその穏やかな時間の流れ。スマホの電波が届きにくいエリアだからこそ、本当の意味での”デジタルデトックス”を体験できる隠れ里です。