貞操帯（ていそうおび）は、身体に装着することで性的行為や自慰行為を物理的に防止する装置です。その起源は中世ヨーロッパに遡るとされ、十字軍遠征時に騎士が妻の貞操を守る目的で使用したという伝説が広く知られています。ただし歴史家の間では、現存する金属製の貞操帯の多くが19世紀に作られた「創作物」である可能性が指摘されています。

現代では主に二つの文脈で言及されます。第一にBDSM文化における自発的なプレイ用具としての利用で、パートナー間の相互合意に基づく「権力交換」の一形態です。第二に医療現場では、術後の創傷保護や認知症患者の自己触控防止など、治療補助具として応用されるケースがあります。

重要なのは、いかなる場合でも本人の同意なしに使用することが重大な人権侵害に当たる点です。日本では2017年の刑法改正により、監護者による貞操帯の強制使用が「性的虐待罪」に該当すると解釈されるようになりました。歴史的経緯と現代社会における倫理的課題を理解することが、このテーマを扱う上で不可欠です。