戦争映画においてレイプシーンが描かれる背景には、暴力の本質を伝えるという芸術的意図が存在します。第二次世界大戦を題材にした『ソウル・オブ・ウーマン』(2019)やボスニア紛争を扱った『戦場の叫び』(2007)など、歴史的事実に基づく作品では、女性の身体が戦時下で武器化される現実を可視化しています。
ただしこの表現手法は常に倫理的議論を伴います。2021年に公開された『沈黙の戦場』では、監督が「加害者の心理描写より被害者の尊厳を優先した」と説明するように、過度な生々しさを排した暗示的描写が新しい表現スタイルとして注目されました。
戦争犯罪の記憶を継承するためには、不快な真実と向き合う必要があるという主張と、トラウマを再燃させるリスクを指摘する声とのバランスが課題です。国際映画祭での審査基準では近年、性的暴力描写に警告表示を付与する動きが広がっており、表現の自由と視聴者保護の両立が業界全体のテーマとなっています。