週明けのオフィスエレベーターで、ふと隣の同僚が呟いた。「月曜日のたわわ、気持ち悪くない？」その言葉に込められた現代社会の病理を考察する。

「たわわ」とは本来、豊穣を表す美しい日本語だ。リンゴの枝がたわむほど実る光景を想像させる。しかし現代のビジネスパーソンが月曜朝に感じる「たわわ」は、未処理タスクが枝垂れんばかりに積み上がる精神的重圧を指す。金曜日に先送りした仕事が、週末を経て複利のように増殖している現実。

神経科学の研究によれば、月曜朝のコルチゾール値は平日中で最大となる。デジタルデトックスが叫ばれる時代に、スマートフォンから溢れ出す通知の「たわわ」が、私たちの副腎を酷使している。Slackの未読メッセージ、未承認の稟議書、延期された会議リクエスト——これらデジタルフルーツの重みが首筋に張り付く。

通勤ラッシュ時の満員電車こそ、物理的「たわわ」の典型例だ。東京都交通局のデータによると、月曜朝の混雑率は他曜日より平均7.2%高い。他人の体温と鞄の角が織りなす不快の共鳴現象。これが「月曜日のたわわ」に付随する生理的嫌悪感を増幅する。

しかし現象の本質は、時間管理の歪みにある。1日8時間労働の幻想が、現実の業務量を圧縮し「たわわ」状態を必然化する。タスク管理アプリのTODOリストが垂れ下がる様は、まさにデジタル時代の収穫過多と言えよう。

この矛盾を解決するには、労働の実りを再定義する必要がある。過剰な「たわわ」を剪定する勇気と、本当に価値あるタスクを見極める審美眼が、21世紀のビジネスパーソンに求められている。月曜朝の気持ち悪さは、現代人が収穫期を誤認していることへの警告なのかもしれない。